高原秀介 Shusuke Takahara

2015年度 フルブライト研究員プログラム
留学先:ハーバード大学

2015 Research Program
U.S. Affiliation: Harvard University

No.6
大統領選挙の年、現地で研究「歴史の節目に立ち会えた」
Researching about American history while experiencing a historical presidential election.

 もう一度米国に行こうと思ったのは、40代半ばを過ぎた頃。中堅からベテランの域にさしかかろうとしていた。「前回の留学から15年。米国で研究に専念するなら今しかチャンスはないと思った。」
米外交史が専門。第28代米大統領ウッドロー・ウィルソンの外交に焦点を当てて研究を続けてきた。「第一次世界大戦(1914-1918)に参戦するなど、アメリカが国際政治に積極的に関わる流れを作ったのがウィルソンです。」大統領の価値観が、当時の外交やその後の歴史の流れにどのような影響を与えたのか。米国でないと見られない史料にあたりながら丹念に歴史を再構成したいと思い、米外交史研究の気鋭が集まるハーバード大を選んだ。

 2015年9月、妻と5歳の娘とともに渡米した。4年に1度の大統領選挙の前の年だった。米国政治の研究者として時宜にかなっていた。渡米から5カ月後の2016年2月、アイオワ州の党員集会を皮切りに大統領予備選がスタート。その夜、大学構内の建物ではアイオワ州の党員集会の様子を報じるテレビ中継を学生や教員が見られる大学主催のイベントが開かれ、盛り上がりを肌で感じた。「学生が選挙について議論する場を大学が設けていることに感心しました。」その月の下旬、ボストン近郊に民主党の予備選候補、サンダース氏とクリントン氏が相次いで来訪。会場に足を運び、演説を直接聞いた。「クリントン氏の支持者は人種的に多様でした。サンダース氏の支持者の大半は白人や若者。同じ党でも候補者でこんなに支持層が違うのかと直接肌で感じました。」

 帰国して約半年後の2017年1月、トランプ氏が大統領に就任した。「奇しくもというか、研究してきたウィルソン大統領のアメリカが第一次世界大戦に参戦してちょうど100年後の年、アメリカは自国本位の政策に振り子が揺れた。研究者として歴史の節目に立ち会えたと思う」と話す。

 滞在中、今後乗り越えるべき課題も見つけることができた。
 米国内で開かれた学会や研究会には積極的に参加し、現地でないと感じられない研究の潮流に触れることができた半面、日本のイメージや理解が単純化されていたり、一方的だったりする現状を目の当たりにした。「日本出身の研究者が自ら米国に出向いて幅広いテーマの学会で発表したり、英語で論文を書いたりと、積極的に発信し、グローバルな視点で日本に関する新しい知見を提供し、外交史研究や政策提言でのメインストリームに入っていく必要性を痛感しました。自分自身の新たな課題として取り組んでいこうと思っています。」