My Fulbright Story

No.9 Monden Kazunori

CSAのグループで運営している生産者の家族と=2017年7月

Confirming Research About the Advanced Stage of the "Connected Economy" in the U.S. for Community Supported Agriculture (CSA)

研究員として在籍した Cornell University

2011年3月、東日本を襲った大震災が転機だった。取引先を失い、販路を回復できずに苦労している多くの被災者を取材した。「物と金のつながりのもろさを実感しました」。一方、首都圏から定期的に通うボランティアと地元の住民との間で信頼が育まれ、「人と人」のつながりの強さも感じた。

「過疎化と高齢化が進んだ被災地で一次産業やコミュニティーを守るには、『人のつながり』を基盤にした経済の仕組みが必要だと思いました」。以前取材した宮城・鳴子のコメの CSA(Community Supported Agriculture=コミュニティー支援型農業)を思い出した。生産者が新鮮で安全な食材を消費者に直接販売して安定収入を得る取引手法だ。1970年代、日本で普及した産消提携に通じる取り組みで、80年代以降、この手法が広がった米国がいまは「CSA先進国」となっている。

米国の CSA の実践地域を調査し、日本に普及させるヒントにしたい。自社や他の地方紙のフルブライターからジャーナリストプログラムの経験を聞いた。海外取材拠点のない地方紙記者に、米国で調査する機会を与えてくれるチャンスだと思った。腰を据えて研究したいと申し込み、合格した。

日本と似たような小規模生産者の多い東海岸に絞り、日本の研究者の助言で、Cornell University のあるニューヨーク州イサカへ、妻と5歳の長女と3人で渡った。イサカ周辺を中心に CSA を実践している小規模生産者を訪ね歩いた。

CSA の手法は、野菜生産者だけでなく酪農、花き、パンやメープルシロップにも及んでいた。印象深かったのは、有機小麦農家の男性との出会いだ。企業的農業の普及で失われた地元産小麦を取り戻すために、州内に2カ所しかなかった製粉所を新たに設立。試行錯誤で製粉技術を学び、そこで製造した小麦粉でパンも作り、地元で CSA の会員に提供した。

「調査を通して、物を買う行為は作り手の生産物や取り組みに消費者が支持の意思を表す『投票行動』だという考えを教わりました。日本でも、投票行動として作り手を支える買い方が浸透すれば、地域は豊かになっていくのではないかと思いました」

帰国してほどなく、米国で取材したことを連載「米国流直売経済 CSA先進国の今」と題して掲載した。

渡米前、娘の転入に不安がありましたが杞憂でした。公立学校側の英語圏外の子どものサポートは手厚く、娘はすぐ環境に慣れました。家族の中で一番充実した生活を送っていたと思います。