フルブライトストーリー

No.18 ダニエル・ホランド

都外国語大学での私のクラス。発表を終えた学生たちと。

クリスマスの歓声とアメリカの起業家精神——日本の学生そして隣人達への貢献

クリスマスは、京都で家族と一緒に自転車巡り。 サンタクロースの格好をして、クリスマスキャロルを歌いながら、季節を満喫。
発表を終えた学生たちと。
弓道のクラスを訪問。弓を射る92歳の方もいました!

2017年12月25日のこと、7名のサンタクロースの一隊がクリスマスキャロルを歌いながら京都・鴨川の川辺を自転車で走り、日本の歩行者たちにクリスマスの賑わいを振りまいていた。

この「自転車に乗ったサンタクロース達」の正体は、フルブライト・プログラムの一環で京都に滞在していたダニエル・ホランド博士とその家族だ。「日本の人々と交流することが私たち家族みんなのお気に入りのアクティビティでした。誰もが私たちを見て笑い、たくさんの笑顔に出会えました。本当に楽しかったですね」と振り返る。

ユタを本拠地とするビジネススクールで起業家精神とビジネス戦略を Associate Professor として教えてきたホランド博士は、日本のビジネスカルチャーに以前から興味を持っていた。10代の頃に日本に暮らし、日本を気に入ったためもあったが「日本は世界有数の革新的な国家ですが、世界有数の起業家精神を持つ国家ではありません。そこが面白いところなのです」とも指摘する。今回日本で起業家精神を教授しながら日本について学ぶ機会を得られたのは、日本政府が起業家をサポートする姿勢を打ち出したことで、日本との縁が再び結ばれたからだった。

家族とともに日本へ向かい、京都外国語大学と同志社大学で起業家精神と国際ビジネスについて教え始めた。授業では、アメリカの企業精神と、リスクを取り決断をするアメリカ人のやり方について学生達と縦横に論じあった。

学生に特に人気だったプログラムは、授業の中で行ったビジネスコンペティションだった。「学生にグループを作らせて、グループごとにビジネスのアイディアを考えてもらいました。授業の終わりには他の教員やビジネス関係者をクラスに呼んで、一定の予算を仮定して投資家の役を演じてもらいました。各グループと話をして、自分がどのグループに幾ら投資をしたいか選んで投資してもらったのです」

授業は英語で行われ「アクティブ・ラーニング」という学びのスタイル自体も馴染みのあるものではなかったため、学生たちは初めのうちは落ち着かない様子だったという。「ですが、時間が経つにつれ、学生との距離は縮まりました。とても良い関係を築くことができ、共に多くを学びました」と懐かしむ。

日本に滞在中、日本のビジネスカルチャーについて多くを学んだ。「おもてなし」のコンセプトに魅了され、日本のカスタマーサービスに感銘を受けた。アメリカに帰国した今、アメリカの学生に対して授業を行う中で、カスタマーサービスへの細やかな配慮がいかに日本のビジネスに利益をもたらしているかについて論じている。

自らも責任ある父親として、子どもの安全に対する日本の人々の関心の高さがありがたかったと振り返る。小さな子ども達が、夜間でさえも学校から家に歩いて帰っていくのをよく目にした。「京都にいた時、娘を当時習っていたバレエのクラスに、夜に一人で自転車で通わせていました。アメリカの大都市ではなかなかできることではありません。それができたことは娘にとって、大きな自信になりました」

日本を含めた多くの国々は、アメリカにとってビジネス上の競争相手だと考えられる場合が多い。しかし、ホランド博士は、各国の異なる知識や視点を活かし、集団の利益のために協力することは可能だと信じている。そのためには「偏見を持たずに他国へ行き、探索する意思を持ち、できるだけ多くの人と出会い、同僚から学ぶ機会に目を光らせるのが良い」と勧める。「自分に馴染みのある居心地の良い場所から一歩外へ踏み出すことを難しく感じる人もいる。けれども、他国の人々と交流することによって、かけがえのない、そしてこれまでには体験したことのない、前向きでプラスとなる経験を得られる」ということを力説された。