軽部紀子

2017年度 大学院博士論文研究プログラム
留学先 カルフォルニア州/カリフォルニア大学リバーサイド校

世界中から集まったフルブライターと、シカゴにて。Gateway Orientationの一コマ。=2017年8月

No.19
苦労も大きく、チャンスも大きい、先住民文化研究者として視野の広がった1年間

ハワイの先住民文化『フラ』を通じて、アメリカの「人種」、民族、文化の問題を考える文化人類学を専攻。ハワイを舞台にフラを研究してきたが、島外に移住していった人々が伝統文化をどのように受け継いでいるか知りたいと、移住者の多いカリフォルニア州でフィールドワークを希望した。

研究対象として選んだKumu Hula Association of Northern Californiaは、先住民文化への無理解が根強く残っていた1970年代に、故郷の伝統や文化を共感し、後世のために繁栄させられる場所を作ろうと設立された団体だ。「変わり行く時代の中で、変わらないものをどうやって守って来たかを知るためには、歴史ある団体を調査したいと考えました」

代表者の女性の家に複数回通い、住み込みで一緒に生活しながら調査を行った。「文化人類学の研究では、インフォーマント(情報提供者)との信頼関係が一番大切です。一緒に暮らして、信頼してもらえて初めて聞ける話もあり、家族のなにげない会話の中で、重要なエピソードが突然出てくることもあります」

特に印象に残っているのは、この団体が毎年5月に主催している、1万人規模のハワイアンイベントだ。代表者の女性が急病で参加できなくなったため、他の家族と共に運営の中核として働いた。「このイベントに、同期の日本人フルブライター達が遊びに来てくれました。研究の現場を見てもらうことができ、とても励みになりました」

アメリカへの夢や憧れは、実は留学前にはあまりなかったと振り返る。「先住民に寄り添った視点で研究していると、アメリカに生きるのは苦しく、アメリカ社会は不平等に思えます」しかし実際に渡航して、自ら多くの困難に直面することで、自分の行動次第では逆境をチャンスにもできると気がついた。「日本は安定している反面、自分では変えられないことも多くあります。反面、アメリカでは苦労や努力を惜しまなければ、壮大な夢も叶えることができます。すべては自分次第。今まで狭い価値観で研究していたと気がついて、研究者としても成長でき、人生観も変わりました」

帰国後はSecretaryとして、同団体の活動に引き続き携わっている。