フルブライトストーリー

No.20 ロクサーン・ローレンス

奈良の東大寺にて

百聞は一見に如かず——テレビでは分からなかった、真の日本文化との出会い

着物をレンタルして、東京浅草を人力車で観光
北海道の雪まつりにて、人生初めての雪

「こんな複雑な鉄道網をどう使ったらいいんだろう?」出身地のフロリダ州マイアミから東京にやって来て、東京の複雑な鉄道網に圧倒されたという。「マイアミには鉄道は多くありません。でも東京には様々な色の路線がたくさんあるのです」。交通機関の路線に慣れ、それが便利で発達したシステムだと分かるまでにはしばらく時間が必要だった。

日本のアニメをテレビで見ていた子ども時代から、日本語と日本文化に興味を持っていた。それから何年も経ってようやく、東京の共立女子大学で勉強しながら日本を体験する、まさに「百聞は一見に如かず」ということわざを体現する機会を得ることができた。

「『Japanology in English』という、日本文化と社会が直面している問題について考える講義を履修しました。日本の仕事の構造や、労働人口内の性差、女性が出産後に復職する難しさなど、多くのことを学びました」と振り返る。日本人と留学生の双方を対象とした講義だったが「この講義を取っていたのは私と、もう一人のアメリカ人の二人しか」いなかったという。「講義が完全に英語で行われたので、履修した人が少なかったのでしょう。いずれにせよ興味深い授業で、内容の濃いディスカッションができました。学生が少なかったのはもったいなかったと思います」と肩をすぼめる。

登録者の少ない授業こそあったものの、そのせいで異文化理解やディスカッションの機会が失われたわけではない。例を尋ねると「完全に日本語だけの講義も取りました。そのうちの一つは日本的な姿勢についての二日間の講義で、とても素晴らしいものでした」と笑顔を見せた。「日本人学生による、日本語または英語でのプレゼンテーションを色々な授業で聞きました。共立女子大学での体験は素晴らしく、授業から吸収できることは全て吸収して来ました」

大学のキャンパスの外でも、多くの新しい経験が待っていた。「桜をはじめたくさんの花を見ることができました。フロリダには季節が一つしか無いので、日本の春を楽しみました。秋には葉の色が変わるのを見ました。ただただ美しく全てに魅了されました」

日本の生活に適応することは刺激的でもあり難しくもあった。そのためか、マイアミに戻って以降、アメリカへの留学生に対して以前よりずっと共感できる自分に気がついたという。「私の生まれはジャマイカで、母国語は英語にとても似ています。そのため、アメリカに来た時には、言葉で苦労することはほとんどありませんでした。でも日本という、言語が全く異なる場所に行ったことで、留学生達が経験する困難、そして同じ言語を話す人たちや同じ適応のプロセスを経た人たちに彼らが感じる仲間意識が、以前よりよく分かるようになりました」

日本に滞在中、University of South Florida の Industrial-Organizational Psychology の博士課程に出願して合格した。フルブライト体験のおかげで、労働衛生に関する自らの興味を発見できたことに感謝しているという。

日本を訪れるフルブライターへのアドバイスを聞いたところ、新しい経験にオープンであって欲しい、と即答してくれた。「あらゆる機会を利用して、日本語を話してみてください。必要なら北海道から沖縄まで旅行してみてください。一生に一度の経験です、存分に楽しんでください!」