小林光

2017年度 フルブライト・スカラー・イン・レジデンスプログラム
派遣先:イリノイ州/ノース・セントラル・カレッジ

大学での授業に留まらず、ロータリークラブ等での公開講座も行った=2018年3月

No.21
トランプ政権下のアメリカで、環境政策の実態をみる

専門は環境行政。環境省で係員から事務次官まで勤めた、根っからの行政マン。退官後は慶應義塾大学、東京大学で教鞭を執っている。

昨今、環境政策に消極的とも報じられるアメリカは、もとは環境行政先進国で、汚染物質の総量規制やCO2の排出量取引の先駆者でもある。「アメリカで環境行政を勉強したい」思いを温めていたところ、アメリカ大使館から、日米教育委員会がアメリカで環境について教えられる人を探していると知らされた。勉強ではなく教育が主目的のプログラムだが、またとない機会に飛びついたという。

イリノイ州ネイパービルのノース・セントラル・カレッジで、環境問題全般や温暖化の授業を行った。毎回準備が大変で「受け入れ先の教授に全てのスライドを事前に見てもらいました。スライドだけでも分厚いドキュメントファイルに3冊分は溜まりました」

渡航前は知らなかったが、ネイパービルは環境意識が高く、2013年に市内の全戸・全事業所約6万戸のスマートグリッド化を達成していた。CO2の排出量を削減し、電気代の総支払額も低減したと聞き、先進性に驚いた。

ネイパービルばかりではない。多くの都市が「行政に頼らず自分たちの力でやろう」と、環境と経済の両立に向けた努力を重ねていた。以前は公害都市と言われたピッツバーグやチャタヌーガ(テネシー州)にも足を運んだが、やはり自主自律の発想で、環境は大きく改善されていた。

「報道を通じて見える姿がアメリカの全てではなく、長い伝統があって、健全な市民力が維持されている。若い時、フランスに留学したのですが、ヨーロッパと比べてアメリカが威張っているとか、教養がないということはありませんでした。ヨーロッパ文明の正当な子孫であり、洗練された国だと感じて親近感を持ちましたね」

在留中から現在まで、アメリカの環境・経済政策の実態についてメディアへの寄稿等を通じて発信し、学生にも伝え続けている。


学期の終わりに、クラスの学生さんと=2018年6月