フルブライトストーリー

No.24 林田真心子

カンザスシティでのフルブライト研修。世界各国からの研究者とのかけがえのない出会いに恵まれた。

人を知りたい、世界を知りたい——長年の夢を支えてくれた、2人との出会い

週末はコミュニティーカレッジや列車の旅で西海岸の人々とのふれあいを楽しんだ。
エンリッチメント活動ではLA社会や文化に触れる多くの機会を得た。

元テレビ局のジャーナリストで、メディアやコミュニケーションをより深く学びたいと考え、研究者に転身した。

留学への想いは学生時代から温めていたが、機会が巡って来なかった。「若い人には世界に飛び出して欲しいのですが、自分が踏み出したことがなくては説得力がないですよね。やはり行きたい、多くの人と出会って研究を深め合いたいと考え、応募を決めました」

ロサンゼルスを留学先に選んだ理由は、指導教員 Sandra Ball-Rokeach 教授と彼女が取り組むコミュニティ研究プロジェクトの存在だ。ロサンゼルスでは多様な民族と文化が共存しているが、グローバリゼーションや再開発(ジェントリフィケーション)の波の中で、その社会のダイナミクスは変わり続けている。「教授は、エスニック・コミュニティのつながりの変容を理解するために、20年以上にわたって地域によりそったフィールド調査をつづけています。その活動に興味をもち、『メディア実践による異文化理解』を自分のテーマとして、参加をお願いしました」

多くの人と出会えるよう力を貸してくれたのが、フルブライトのエンリッチメント活動のコーディネーター、Ann Kerr 氏だ。「Ann は非常に supportive で、新聞社や警察署など色々なところへ連れて行ってくれました。南カリフォルニア地域には世界中から100人以上のフルブライターが集まっていましたが、Ann は彼らを UCLA に講師として招き、自分の体験を話してもらうという授業を持っていました。講師はもちろん学生たちも含めて、民族も文化も立場も違う人たちと、アメリカと世界について議論することができました」

日本と違い、多様な人々が暮らすロサンゼルスでは、容易に自分を理解してもらえないこともあった。初めは寂しさも感じたが、やがて異文化の人々の「分かるまで待てばいい」というおおらかな考え方に気がついた。「英語は得意ではありませんが、相手を知りたい、世界を知りたいという気持ちが支えになってくれたのだと思います」。出会った多くの人を通じて世界の広がり、繋がりを感じた1年間だった。