京都大学医学部附属病院の緩和ケアチームが開いてくれた送別会 (私と私の妻、ケアチーム全員)
フルブライトストーリー
No.25 ロバート・C・マッコーリー
京都の忘れ難い思い出——プロフェッショナルな人々の温かなもてなしを感じて
「行ければ何処でもいい、というつもりは全くなく、日本に貢献し、日本で学びたいという具体的な目標を持ってフルブライトのスペシャリスト・ロスターに登録しました」と振り返る。妻が過去に10年間日本に住んだことがあり、日本語を話すこともでき、日本に非常に慣れ親しんでいるため、マッコーリー医師自身も日本に対しての興味と共感が非常に強い。
妻と4人の子どもと共に4週間日本に滞在し、緩和ケアのスペシャリストとして京都大学大学院医学研究科と京都大学医学部付属病院に合計3週間配属された。「医療チームの回診に同行したり、倫理の研究者や緩和ケアの医師達と会ったりしていました。また、京都大学医学部付属病院、京都大学、東京大学で教育活動や国際セミナーも行いました」
米国と日本の緩和ケアの類似点、相違点を観察したいという強い動機を持っていた。患者の診療に直接関与はしなかったが、日本の医師達がどのように回診し患者を治療するかはよく理解できたという。経験豊富なマッコーリー医師は、これまで、アメリカの医療文化を当然のものとして受け入れ、世界中どこでも自分と同じやり方で物事が行われていると考える節があったという。しかし、日本での経験のおかげで、世界にはさまざまな医療文化があると気がついた。「アメリカでのやり方は日本とはかなり異なります。アメリカと日本では、例えば、緩和ケアチームのメンバー構成が違います。日本はアメリカと比べ、精神医学と薬学をかなり重視します」
一家は日本側のホストの医師とその同僚達から丁重な歓迎を受け、京都での生活を楽しんだ。「そこまでしてくださらなくても良かったのですが、私たちのために京都に家を借りていただき、わたしたちはその家でとても快適に過ごせました」。医師も同僚たちも想像だにしていなかったが、その家もまた、アメリカと日本の違いを浮き彫りにすることになった数々の例のひとつとなった逸話がある。マッコーリー医師は身長約6フィート3インチ(190センチ)の長身だが、その家にあるすべての戸口の高さは6フィート(182センチ)以下しかなかったのである。「私が居間で座っていると子どもの一人がやってきて私の頭を抱いて『お父さん、大変!』と言うんです。それは、頭に切り傷や打ち身の跡ができていたからなのでした。どこに行くにも身をかがめることを忘れないようになるまでにはしばらく時間がかかりました」
出入り口の高さこそ不十分であったものの、マッコーリー医師は京都での経験を非常に高く評価している。「異国で暮らし、異なった生活様式を目の当たりにすることは楽しい経験でした。私のホストの医師とチームはとても知的で勤勉であるだけでなく、一緒にいて大変楽しく、私たちを温かく迎え入れてくれました」
この素晴らしい体験をもたらしてくれたスペシャリスト・ロスターを、マッコーリー医師はアメリカの同僚をはじめ多くの研究者たちに、もっと広めたいと願っている。「スペシャリスト・ロスターは知る人ぞ知る存在ですが、このまま秘密にしておくべきではありません。もっと知られていたら良いのにと思います。協働や異文化間を橋渡しするのに富んだ機会なのです。たくさんの方に、挑戦してもらいたいですね」と熱っぽく語ってくれた。