フルブライトストーリー

No.29 マイケル・A・ファミアーノ

東北大学へ訪問する機会があり、須田利美教授と共同研究を行い、実験の可能性を探ることができました。

夢は日本で暮らすこと——天文学者が地上で出会った、美しい景色と多様な人々

日本滞在中は、近隣のアメリカンスクールに通う生徒や先生たちととても仲良くなりました。生徒たちからのリクエストにより学校にてお話をさせていただきました。この写真は、その生徒たちとの1枚です。

物理学の教授で、理論天文学、特に恒星の核反応による元素合成が専門だ。恒星の内部では周囲と比べて特に高温・高密度なガスがプラズマ状態で存在しており、活発な核反応の舞台となっている。

東京都三鷹市にある国立天文台の客員研究者として、共同研究者の梶野敏貴教授と共に理論研究に取り組んだ。「日本での研究はもう随分前、大学院時代に始まって、それ以来研究目的で何度か訪日しています。梶野教授は非常に著名な物理学者で、私の友人でもあります」

国立天文台は、世界各国から一流の天文学者が集結する、世界有数の研究機関だ。「研究者の方々だけでなく、共同利用機関である東京大学の大学院生の方々や、強力な計算機システムのお陰もあり、滞在中に新たな理論や手法、プログラムを幾つか構築できました」。思い浮かんだ時にいつでも、一流の科学者たちと面と向かって議論が出来る環境のお陰で、大いに研究が進展したと感謝と共に振り返る。

お気に入りの乗り物、新幹線に乗り、北海道から京都まで様々な場所を旅した。「北海道には1月に行ったので、雪を見ることが出来ました。仙台にある東北大学を訪れた時には、ちょうど桜の季節でした。国中のいたるところに、見るべき景色がありました」

文部科学省が主催する交流イベントで、自分とは異なる専門分野のフルブライターと会う機会もあった。東京で開催されたフルブライト同窓生の有志による TEDxトークでは、年齢も専門も異なる出場者の話を聴いた。「私は科学者であって、音楽やスポーツに詳しい訳ではありません。世界各地から日本を訪れたフルブライター達から異分野の話を聴けたのも、楽しい思い出の1つです」

忘れがたい思い出を懐かしみながら、将来の夢は退職後、日本で暮らすことだと語る。「日本を訪れては離れることを繰り返してきましたが、正直なところ、離れたくはないのです。来るたびにとても良い印象を受けており、本当に良いところだと思っています」

日本での時間を一層楽しむために、訪日を考えている外国人には、少しでもいいから日本語を学んでみることを勧めている。「『こんにちは、私の名前は…』この程度でいいのです。やってみようとしていることが伝わればその分、日本の人たちや文化に溶け込みやすくなります。訪れた国の人たちと丁寧に接することは、フルブライトの目的にもかなっていると思います。自分自身をオープンにして、積極的に飛び込んでいけば、いずれより深い日本文化や言語、人々や歴史のことが分かるようになってくるはずです」