フルブライト交流事業

鮫島卓臣

2019年度 大学院留学プログラム
留学先:Yale University

スタジオの仲間と記念撮影

No.36
自分を信じて導き出した答えの先――自信を得て成長を実感した1年

フルブライト・プログラムのことは小学生の頃から頭の片隅にあったが、真剣に留学を考え始めたのは大学院進学時だ。世界トップレベルかつ国際的な環境で最先端の建築と環境問題を研究するため、留学を決めた。

決断は次々続く。まずは行先だ。フルブライト・プログラムの内定が米国行きを後押しした。次に進学先。家族や友人が揃って薦めた大学にするか迷った。悩み抜いた末、合格した全大学を訪問した。Yale University に「一目惚れして、直感で決めました」。

研究主題は、環境に最適化した生物の身体構造を参考に、生物模倣を用いた持続可能な建築だが、建築の概念から学び直しになった。西洋と日本で建築への考え方は大きく異なる。日本は柱の割り振りを基準とした「間(ま)」という空間概念で設計するが、西洋は四方を壁で囲み「箱」のように空間を作る。この違いへの戸惑いこそ、留学に望んだ国際的な環境と新しい視点だ。スタジオという授業では、時間を忘れ翌朝まで模型作りや議論に没頭し「同じ事柄に対し様々な視点があると学びました」。

学生の60%は留学生、うち40%はアジアからの学生だ。「政治に対する考え方、コロナウイルスへの姿勢、Black Lives Matter 運動への意見など、学問以外の会話からも、多様な価値観に気づきました」

「この1年で人が変わったくらい成長したと思います」と笑う。留学で新卒レールから外れることに躊躇した自分はもういない。「環境問題は、今後複雑化し難しくなるでしょう。世界が抱える問題に生物模倣の観点を見直し、自らの広がった新しい視点から取り組みたい。20世紀までの社会とは異なる新しい社会の在り方を、建築を通して考えたい」

「自問自答の期間が長かった」と振り返るが、放つ言葉には自信が溢れている。「悩んだ時間に無駄はなく、その分だけブレがなくなります」。考え抜いて出した決断や信じた直感は己を成長させ、強くさせる。そして、その強さは未来を切り開く。



プレゼンテーションの様子


Yale University の名物教授、ピーター・アイゼンマンとサヴァワ邸について議論


入学式で同期の仲間たちと