フルブライトストーリー

No.37 ペリー・ハウエル

2020年4月 横浜市南区にある大岡インターナショナルレジデンス前にて

挑戦することを教え、学び得たこと——強まる教育への情熱と深まる日本への愛

2019年12月 パンデミックが起きる前、横浜にある MARK IS ビルの外にて
2020年3月 横浜市を流れる大岡川沿いの桜。この頃にはマスク着用が日常化した。

「最初は妻がフルブライターで、今度は私がフルブライターです」とペリー・ハウエル博士が話してくれた。Florida State University の College of Arts and Sciences で English Department における Lecturer として教鞭を取る。専門は、パブリック・スピーキング(演説/スピーチ)とアメリカ社会だ。招へい先である横浜国立大学でライティングとアメリカのメディア、スピーチ、修辞学(レトリック)を教えるべく、2019年9月に招へい講師プログラムで家族と共に来日した。

日本人学生の傾向として、質問がある時や内容がわからない場合、あるいは反対意見を持ち合わせていても、発言はあまりせず控えめだ、と妻から聞いて学んでいた。これは、先生に対する敬意が根底にあるためだと感じていた。文化の違いを理解しながらも、学生にはこれまで経験したことのない挑戦に向き合ってもらいたかった。「学生が質問しやすいよう、フレンドリーでいることを心掛けました。もし、私の話すスピードが速すぎたら、それを伝えるよう促しました。徐々に学生たちは自分の意見を言えるようになっていきました」

授業は、様々なスタイルを試してみた。例えば、日本人学生と留学生をペアで組ませ、互いに助け合うよう仕向けた。グループ活動のほかに「特にライティングの授業では、どの課題が最も深く考えさせるかを確認するため、あらゆる課題を与えてみた」と言う。資料が英語表記のみの時は、学生だけでなく、自分への挑戦でもあった。

「色々な国の学生からアメリカに対する様々な認識や信念について聞くことは、非常にワクワクさせられます。学生たちは、みな揃ってアメリカについてもっと学びたいという姿勢でしたので、教えることがより一層楽しかったです」と語る。これまで似通った価値観を持つ学生ばかり教えていたため、多くの質問は新鮮だった。「アメリカ文化についてこれまで思ったこともない角度から質問されました」

新型コロナウイルスによって残念ながらプログラムを継続できなくなり、全てのフルブライターにとって大きな試練となった。それでも「もし日本で働き住み続けられたら喜んで残ったと思う」と語った。ハウエル博士一家の日本への愛は深く、長い歴史がある。すべてのきっかけは、娘が日本に興味を持ったことだった。大きく分厚い辞書を手に何時間もマンガを訳し、いつか日本へ行くと情熱に溢れ、強い決意を抱いていた。これらがフルブライト・プログラムへと導き、2009年に夫人が招へい講師プログラムのフルブライターとして一家で初来日した。そして、此度はハウエル博士自身がフルブライト招へい講師としての来日であった。「日本が大好きで、友人もいて、『挑戦すること』を教えるのが大好きです」と話す。余談で「最近知ったのですが、アメリカでも日本のテレビ番組が観れるので、今も引き続き朝のドラマを見ています。アメリカに居ながら日本の朝ドラを観ているのです」と付け加えた。一家の日本愛は今後も続く。

「私は、フルブライトのミッションを強く信じています。自分自身の経験を頻繁に学生や同僚と話し、応募を勧めています。実際に会って関係を築くということによって、互いをきちんと『個』として認識し、ステレオタイプや固定概念で相手を見ることがなくなります。フルブライター本人と受け入れ大学に勤める仲間にとって、それはとても大きな意味があると思います」

更に、今回思いがけず得た経験がある。それは、所属学部を超えた交流だ。この交流は、本国で所属する大学と招へい先の両大学にとって有益であり、あらゆる可能性を秘めていると熱く語った。「フルブライト経験は、私を教育者として成長させてくれたと本当に思う」と振り返る。