フルブライトストーリー

No.42 石田秀憲

【International Day】 の主催者

生徒に背中を見せることも教育——アメリカでの経験を「生きる教材」に

自然豊かなオクラホマの農場にて

現在は英語教員だが、もともと目指していたのは国語の教員。だから、教員1年目のときに知ったFLTAプログラムにずっと興味を持っていた。「英語を使いながら日本語の良さを伝えられる。自分の夢を叶えられるプログラムだと思ったんです」

しかし、職場に穴をあけたら迷惑では、と迷い続けた。応募要項には「現職教員の場合、教育経験7年以内の者からの応募を歓迎する」との記載がある。教員7年目、ラストチャンスだと思って決心した。「挑戦する姿勢を生徒に見せるのも良い教育ではないか、と同僚の先生方に背中を押していただきました」

派遣先の Northeastern State University では、日本語を一から学ぶ初級クラスを任された。当初は2学期分を担当する予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で、担当できたのは1学期分だけ。「残念でしたが、今も日本語の勉強を続けている学生が多いと聞き、嬉しいです」。折り紙や箸、書道セットなどを日本から持ち込み、学生たちに日本文化も体験してもらった。

また、派遣先周辺は、ネイティブ・アメリカンをルーツに持つ人々が多く暮らす。「ネイティブ・アメリカンの文化を学ぶ授業を受けたり、大学の近くにある博物館を訪れたりしました。多様な文化や背景を知れたことは自分にとって非常に大きく、アメリカという国を一面的に捉えがちだったことを反省しました」

今回の経験を生徒に還元する責任があると考えている。「かねてから、教科書の知識を教えて終わるのではなく、教科書を使った学びをきっかけに英語以外のことを学び、考え、発信できるようになる教育を目指してきました。今回、僕自身が英語での発信を経験したことで『生きる教材』になれるというか……生徒に英語を学ぶ意義を伝えやすくなったと思います」

迷った末の留学だったが、得たものは大きかった。「一時的に職場に穴をあけることになっても、経験を持ち帰ることで貢献できることのほうがはるかに大きい。勇気を出して挑戦してほしいです」