フルブライトストーリー

No.49 児島麦穂

所属していた言語学科の教授や学生と地元の小学校を訪問。世界の言語に親しんでもらうために、小学生たちの名前を日本語で書きました。

広がる視野と強まる自信——コミュニケーション研究の面白みが増した1年間

ルームメイトたちと。知らない土地で生活するのは孤独だったのですが、なんでも相談にのってくれ、助けてくれるルームメイトたちのおかげで楽しく過ごせました。
Trevor Noah のスタンダップコメディを見に行きました。性別、人種、エスニシティ、国籍に関わらず、どんな人でも一緒に笑えるパフォーマンスに刺激を受けました。

フルブライト・プログラムを知ったきっかけは大学の教員に紹介されたことだった。「私は日本語の会話を対象に笑いに注目した分析を2018年から続けてきました。笑いが言語・文化・社会によってどのように変化するのかを比較するために、アメリカへ留学したいと思っていました。また非常に知名度の高い奨学金制度でしたので、自分のキャリアにとって、良いのではないかということと、研究者同士の繋がりが増えるのではないかと考えて応募しました」

University of California, Santa Barbara の研究環境はとても整っていると感じた。教授陣にも著名な人物が多く、自分がコミュニケーション研究を始めたときに読んだ、先行文献の著者たちの指導を直接受けることができ、恵まれた環境にいると実感した。

コロナ禍のため留学期間の前半は、オンラインの授業が主体で、学生同士が会ったりする機会はほとんどなかった。社会言語学やコミュニケーション学を専攻し、20代女性の日常会話に表れる社会・文化規範の継続的縦断的調査が研究テーマだったが、まずデータを集めることが困難だった。しかし、一軒家をシェアしていたルームメイトたちや受講していた授業の学生にお願いし、どうにか研究に必要なデータを集めることができた。

留学期間の後半になると、教授や学生との交流も行われるようになった。授業やランチミーティングが対面式になり、学生主催の研究会に出てデータ・セッションや学会発表の練習をしたり、日本語学習者との交流も行われた。様々な国のフルブライターと親睦を深めるエンリッチメント・セミナーにも出席した。「そこでダンスや演劇などの芸術、フェミニズム、環境問題など、自分と違った研究をしているフルブライターたちと話し、それぞれの国の状況を知ることができたことは大変有意義でした」

もともと日本で研究者になりたいと思っていた。しかし今回の留学でアメリカの研究環境に触れ、ここで活躍したいという気持ちが強くなった。「留学中に出会った方々が私の研究に興味を持ってくれたことで、研究に対してより広い視野を持つようになりました。これまで日本で生活してきた経験からその文化を理解する研究者として、日本語の会話を研究することは私の強みであると気が付きました。今後、コミュニケーション研究に国際的に貢献していければと思います」。アメリカでの経験が自信につながった。

「留学が自分の研究を見つめ直す良い機会になりましたし、視野も広がりました。これから留学を検討している人は、ぜひチャレンジしてみてください」