隔離期間中のホテルにて、1日3回支給されるお弁当を食べている時の一枚です。
フルブライトストーリー
No.50 デイヴィッド・ゴールドスタイン
太平洋に橋を架ける——日本に「アメリカ」を教え、アメリカに「日本」を持ち帰る
デイヴィッド・ゴールドスタイン博士は University of Washington, Bothell の Professor で、マイノリティの問題を中心テーマとしてアメリカの歴史と文化について教鞭をとっている。
ゴールドスタイン博士は、典型的な白人居住区で生まれ育った。学問の道へ足を踏み入るきっかけとなったのは、大学での多種多様な人たちとの交流だった。さまざまな人々がさまざまな物語を持っていることにはじめて気がつき、深く衝撃を受けた。周りの人々の生活をより深く理解するため、この学問の道を選んだのは、生来好奇心の強い博士にとって自然な流れだった。「学べば学ぶほど、いかに知らないことが多いかに気づかされます。自分がよく知らないことについてもっと学びたいと思い、フルブライト・プログラムに応募しました」
フルブライターとして、日本の3つの大学の学部生と大学院生にアメリカの生活様式について講義を行うとともに、学生たちとの交流を通じて、自身も日本の生活様式を肌で学んだ。
ゴールドスタイン博士が日本に興味を持つようになったのは10年前のことだ。東京のとある大学で、アクティブ・ラーニングの実践について指導を行ったことがきっかけとなり、「すぐに日本が大好きになりました」と話す。フルブライト・プログラムのことはなんとなく知っていたが、子どもが小さいうちは現実的な選択肢ではなかった。しかし、「今はもう子どもたちが大きくなって独り立ちしたので、以前よりも自由に渡航できるようになりました」。
タイミングなどの条件が揃ったため、フルブライト・プログラムへの応募を決意した。フルブライト招へい講師プログラムの下、来日を果たした。来日は9回目となるが、今回のフルブライト・プログラムでの滞在が過去最長となった。「日本での生活はまったく新しい経験でした」と語る。東京大学、青山学院大学、神田外語大学で、「Teaching ‘America’: Race, ethnicity, and immigration through literature and film(『アメリカ』を教える:文学と映画から見るアメリカの人種、民族、移民)」というテーマで講義を行った。
生徒たちの言語能力の高さと、授業での活発な議論には舌を巻いたという。「アメリカで教えている学生たちよりも、日本の学生たちのほうがアメリカ史をよく知っていたこともありました。私自身も、日本の学生たちのおかげで、アメリカ文化の中で今まで考えたことがなかった側面について考えさせられました」
11か月間のフルブライト・プログラムは、学術面だけが充実していたわけではない。夫婦で日本を旅する機会も得られた。「秋、冬、春と移ろいゆく季節を感じながら日本中を旅したことは、本当に素晴らしい経験でした」
2022年8月にアメリカに帰国したが、「日本に対する親近感は生涯続く」という。帰国以降は、自宅への訪問客に靴を脱いでもらうなど、暮らしに日本文化を取り入れるようになった。もちろんそれだけではなく、学問的な取り組みについても見直している。「これからは日系アメリカ人文学をもっと教えるつもりです」
フルブライト・プログラムへの応募者に対して、ゴールドスタイン博士は「集中力と柔軟性が重要」だとエールを送る。「想像は現実には及ばないものです。想像よりもはるかに良いことも、はるかに困難なことも起こります。乗り切るための心構えをしておくことが大切です」と教えてくれた。