フルブライトストーリー

No.55 ナタリー・モンテシノ

岡山県矢掛町の皆さんへの取材に向け、準備に取り掛かるワンシーン

日本の農村におけるレジリエンス研究——コミュニティ、アイデンティティ、イノベーションの形成に影響する地域の伝統

地域のイベントにて、自身の研究を発表
岡山県矢掛町の高校にて、外国語の習得や異文化交流の意義について話し合う
ホストファミリーとともにお点前の練習

 原文は英語です

ナタリー・モンテシノさんは、コロラド州デンバーを拠点とする非営利団体 Climate Democracy Initiative で program manager を務めている。Colorado State University でアジアを専攻、副専攻として国際開発、政治学、日本語、フランス語を学び、国際関係学の学士号を取得した。大学4年時に、名誉あるフルブライト奨学金を授与された。

フルブライターとして、日本の農村地域における開発、持続可能な取り組み、コミュニティとの関わりについて研究した。研究テーマを選ぶにあたり、自らの生い立ちが大きく影響したと言う。「地方出身者としての境遇は、私にとって常に重要な意味を持っていました。国際関係を勉強しながらも、自分のルーツを活用して地方とつながりを持ちたいと思いました」

留学先である岡山大学では、岩淵泰准教授にお世話になった。岩淵先生が、異国での生活を始めた当初に直面する様々なストレス要因や困難を取り払い、温かく迎え入れ、日本での生活に溶け込ませてくれた。「岩淵先生と岡山大学は、あらゆる活動への参加を促し、私が一人前の研究者になれるようとても熱心にサポートしてくれました」と懐かしそうに振り返る。「指導教官である岩淵先生は、ほぼ毎月、私が地域の人々の前で発表する機会を作ってくれ、いつも多くの人が出席してくれました」

岩淵先生とは日本に来る前から交流があった。「大学2年生の時、Critical Language Scholarship という奨学金をもらって日本語を勉強したのですが、実は岡山大学がこのプログラムを主催しています」。このプログラムの一環として予定されていた岡山大学への訪問は、新型コロナウイルス感染症のためキャンセルになった。しかし、オンライン・プログラムに参加し、そこで岩淵先生と知り合う機会を得た。「先生に働きかけ、フルブライトに応募する1年前から定期的にオンラインで交流するようになりました。実際に日本に着いた時には、先生と私はとても強い絆で結ばれていました」

異国での現地調査には困難が伴うが、こうした調査のおかげで日本の農村事情を独自の視点で総合的に理解することができたと言う。「農村レジリエンスや地方の将来など、もし気になる課題がある場合、その問題をより深く理解する最短の道は、その影響を最も受けている人々と話すことです。農村部に住む人々にインタビューし、時間をかけて関係を構築し、その土地の現状を直接目にしたため、実態を大体つかむことができました」

滞在中は、伝統的な手法の農作業にも参加した。サツマイモや米を収穫し、餅つきも体験した。このような活動を通して、地域コミュニティを身近に感じ、地域の歴史に溶け込んでいると感じることができた。岡山でお気に入りの場所は、昔から備前焼で有名な備前市だった。ここで陶芸の集中レッスンを受けたことは、岡山での最も楽しい体験のひとつだった。