フルブライトストーリー

No.56 クリスティーナ・スコット

共立女子大学で教鞭を取れたことは、素晴らしい経験でした。

家族の視野を広げた日本での特別な経験——日本での講義経験や相互理解への一歩

満開の桜は、最高でした!
来日中は、東京大学の駒場ロッジ別館に滞在しました。
娘たちは10年後に東京大学の交換留学生として来日する計画をすでに立てました!

 原文は英語です

クリスティーナ・スコット博士は、Whittier College の Department of Psychological Sciences で、社会心理学の Associate Professor として教鞭をとっている。専門は、性やジェンダーの心理的な側面、アメリカメディアがこれらをどのように報道しているかを研究している。

双子の娘を持つシングルマザーのスコット博士は、娘たちがアメリカ第一主義ではなく、より広い世界を体験し、広く包含的な視点から世界を理解してほしいと願っていた。しかし残念ながら、アメリカでも新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、特に双子の1人は体が弱かったため、2年半の大半を家で過ごさなければならなかった。

こうした状況の中、フルブライト・プログラムについて同僚から話を聞き、目にした様々な情報は、暗いトンネルの先にある光のように感じられた。「フルブライト・プログラムは、つらい時期を過ごす家族を良い方向に導いてくれると信じることができました」とスコット博士は言う。博士にとって日本は、自らが最優先とする、子どもへの配慮と安全な環境を提供してくれる国の象徴だった。

時間をかけてフルブライト・プログラムの詳細を調べ、応募を決めたが、ひとつ問題があった。心理学関連の募集がなかったのだ。それでも自らの研究をもとに応募基準を満たす講座を作り、招へい講師のポジションに応募した。アメリカメディアによる性とジェンダーの報道の仕方を中心とする講義で、このアイデアは好意的に受け止められた。

2023年3月、スコット博士と娘たちは東京に到着し、5カ月間滞在した。東京大学と共立女子大学で教鞭をとったことは、非常に興味深い経験となった。この2校は学生の構成が大きく異なり、学生や教員による博士や博士の授業への関わり方も違っていた。

滞在中に驚いたことは、学生だけでなく、ほとんどの日本人が自分や娘たちに敬意を示してくれ、日本人同士も互いに敬意を払っていたため、頭が下がる思いがした。この他に特筆すべきことは、公立小学校での娘たちの経験だ。言葉の壁がかなり高かったにもかかわらず、翻訳ツールやボディランゲージ、顔の表情を組み合わせ、環境に馴染もうと一生懸命頑張っていた。

娘たちを日本に連れてきたことで、日本人の家族や教員、地域社会と交流する機会を持つことができ、日本での経験がより豊かなものになった。自分たちはアメリカ文化を伝えるだけでなく、代わりにできるだけ多くのことを学ぼうとしたので、いろいろな意味で異国の地におけるアメリカ大使のようなものだと感じていた。

今もスコット一家は日本の友人たちと連絡を取っている。娘たちはかつてのクラスメートにアメリカ文化を紹介するビデオを送って文化交流を続けていて、近い将来、留学生として再び日本を訪れたいと思っている。「私たちは、日本に残してきたもの以上のものを故郷に持ち帰ったような気がします。日本ではこんなふうにしていたねと、家族で話さない日はありません」。異なるバックグランドであっても互いに学び合える、という異なる世界観を娘たちが身につけられたことに感謝している。さらに博士自身、所属大学での講義をより良いものにする貴重な見識を持ち帰ったという。

フルブライト・プログラムへの応募を考えている人たちに対して、スコット博士は思い切って行動することを勧めるが、やみくもな行動は慎むよう戒める。また応募する際には日本について学び、これから行く場所を理解し、関心を持つよう助言する。締めくくりとして「心配りをしましょう。教育だけでなく、文化そのものについて、できるだけ多くの情報を集めましょう」と述べた。