フルブライトストーリー

No.61 野村奈央

フルブライトのイベントで参加したボランティア。イースト・ボストンの海岸沿いのゴミ拾いをしました。

苦労も全て吹き飛ぶほど充実した9カ月間——さまざまな地域の研究者と交流する重要性を肌で実感

UMass Boston のオフィス。窓からはオールド・ハーバーが見えます。
自宅からよく散歩に行っていたフェンウェイ球場の近くの商業施設にて。

大学院時代にフルブライターとして約1年間 Temple University に留学した経験もあり、身近には研究員プログラムの経験者も多かった。研究者として再び渡米したいと思うようになったのは、自然な流れだった。「私はアーミッシュの消費文化に関心を持っており、研究の軸はフィールドワークです。腰を据えてフィールドワークに取り組むため、サバティカルを利用してフルブライトの研究員プログラムに応募しました」

2023年9月から約9カ月間、University of Massachusetts, Boston で研究を行った。ボストンには大学や研究所が多く、フルブライター同士の交流も盛んで、多くの出会いに恵まれた。特に印象深かったのは、自分が特に関心を持っている宗教の視点から見る消費文化や物質文化について、異なる視点から物質文化を研究しているジャマイカ出身のフルブライターとの出会いだ。日常的にやりとりする関係になり、研究が深まったのはもちろん、滞在自体もより豊かなものになった。

自分は米国をフィールドとした研究を行っているが、米国以外のさまざまな地域の研究者と交流する重要性も肌で実感した。地域が変われば歩んできた歴史も異なり、それは視座の違いにつながる。米国で学んだことや自分の経験をよりグローバルに発展させていきたいと考え、2024年11月にはチュニジアで行われた研究集会で今回の留学中の研究成果について発表した。フルブライトの経験で視野が広がり、さまざまな地域の研究者とのネットワークを築いていきたいという思いがより強くなった。

9カ月間にわたり、季節の変化を感じながら一つの場所に腰を据え、研究をすることで自分の中にある想いの変化に気が付いた。この経験を胸に、研究者としても、教育者としても、実際に自分で足を運んで自分の目で見ることを大切にしていきたい。

「留学直後はアパート探しなど大変なこともありましたが、そんな苦労も吹き飛ぶくらい充実した9カ月間で、期待を遥かに上回る豊かな経験をさせていただきました。留学を考えている方は、ぜひチャレンジしてほしいです」